気功とがん治療(総論)

■西洋医学か?代替医療か?の前に、基本的理解を。

このページをご覧になっている方は、”気功(もしくは、その他代替医療)で、がんは治るのか?”という関心をお持ちの方々だと思います。

気功や、その他代替医療で、がんが治るのか?という事も重要な事なのですが、その前に、がんに関しては一般的な認識と事実に大きな解離があります。

まず、当院に来院された患者さんと話をしてみると、

①抗がん剤を主とした西洋医学でがんが治るのか?

という点で、大きな誤解を前提にがん治療を進めています。

この点で、1996年に慶應義塾大学医学部の近藤誠医師が『患者よ、がんと闘うな』という本で、抗がん剤は固形がんには効かない(治らないし延命効果もない)という主張をし、現在も同様の主張をしています。

この点が、一つ目の検証点になります。

また、”早期発見されて治ったとされるがんは、”がんもどき”であり、本来治療の必要はない。転移性のがんは、早期発見の時点で既に転移をしているため、対処が早くても治らない”という主張もしています。

②本当にがん検診で発見されたがんの中に”がんもどき”が含まれているのか?

が二つ目の検証点です。

次に、当院の気功療法も含む、

③代替医療(自然治癒力)でがんは治るのか?という検証をしたいと思います。

代替医療と言っても、様々なジャンルがあり、それぞれの施術者のレベルもピンキリという中で、判断するのは難しいのですが、東洋医学や民間療法、整体などに共通する”自然治癒力を上げる”という考え方で、トップレベルの施術者になれば、がんは治せるのか?という視点で考えてみたいと思います。

その後、

④どのようにすれば、がんは治るのか?
という視点で、がんを治すにはどのようにすればよいか?を検証してみたいと思います。

=①抗がん剤でがんは治るのか?=

当院にいらっしゃる患者さんで、もっとも多いのが、”抗がん剤治療をやるから補完的に気功療法を受けたい”という希望を持つ患者さんで、次に多いのが”抗がん剤治療”がうまくいかずに、西洋医学では手の打ちようがない状態になっていらっしゃる患者さんです。

では、まず”抗がん剤で治す”という前提が成り立っているのかを検証してみたいと思います。初めに、日本で最も権威のある、国立がんセンターの見解を見てみたいと思います。

*国立がんセンターの見解

「抗がん剤」とは
「この抗がん剤はよく効く」と書いてあれば、おそらく「これでがんが治る」と考えられるかもしれません。しかし多くの場合、そういうことはありません。抗がん剤で治療して、画像診断ではがんが非常に小さくなり、よく効いたように感じたとしても、残念ながらまた大きくなってくることがあります。

それでも見た目には著明に効いたようにみえますので、「効いた」といわれるわけです。例えば肺がんの効果判定では、CTなどによる画像上で、50%以上の縮小を「効いた」と判断します。もちろん、抗がん剤でがんが完全に治るということもありますが、通常「抗がん剤が効く」という場合、「がんは治らないが寿命が延びる」、あるいは「寿命は延びないけれども、がんが小さくなって苦痛が軽減される」といった効果を表現しているのが現状です。もちろんそれで満足しているわけではなく、がんが完全に治ることを目指しています。

化学療法で治癒可能ながん
抗がん剤で完治する可能性のある疾患は、急性白血病、悪性リンパ腫、精巣(睾丸)腫瘍、絨毛(じゅうもう)がん等です。わが国におけるこれらのがんによる死亡者数は、1年間に15,000~16,000人です。

胃がんや肺がんの年間死亡者数は、それぞれ70,000人と50,000人ですから、それらに比べると比較的まれな疾患ということができます。また、病気の進行を遅らせることができるがんとしては、乳がん、卵巣がん、骨髄腫(こつずいしゅ)、小細胞肺がん、慢性骨髄性白血病、低悪性度リンパ腫等があります。

投与したうちの何%かで効果があり症状が和らぐというのが、前立腺がん、甲状腺がん、骨肉腫、頭頸部がん、子宮がん、肺がん、大腸がん、胃がん、胆道がん等です。効果がほとんど期待できず、がんが小さくなりもしないというがんに、脳腫瘍、黒色腫、腎がん、膵がん、肝がん等があります。

引用:国立がん研究センター がん情報サービス 薬物療法(化学療法),2012/11/3,閲覧)

次に、抗がん剤治療の批判者である近藤誠医師の見解を見てみたいと思います。

*近藤誠医師の”がん放置療法”理論

本書(筆者注:『がん放置療法のすすめ』)が対象とする癌は、肺がん、胃がん、前立腺がん、乳がん等のいわゆる「固形がん」(腫瘤をつくる癌)です。急性白血病や悪性リンパ腫のような血液系のがんは、抗がん剤で治る可能性があるので、本書の対象外です。はまた固形がんでも、抗がん剤で治る可能性がある、小児がん、子宮絨毛がん、睾丸腫瘍は対象外です。

固形がんでも、肝臓の初発がんは、がん放置療法の対象外です。肝臓がんは無症状である間に、命の危険が生じるまで増大する可能性が高いからです。ただし治療したほうがいいかどうかは、がんの大きさや肝機能等によるので、具体的状況によっては放置するのが適切な場合もあります。

本書は、抗がん剤や分子標的薬が固形がんには効かない(治らないし延命効果もない)ことを前提としています。そのデータ的根拠については、『抗がん剤は効かない』(文芸春秋刊)で詳説しました。
(中略)
がんで命の消長に直結するのは、通常、他臓器転移です。リンパ節転移は、仮に存在しても(それが主原因で)死亡することは希です。
リンパ節転移が存在しても「がんもどき」であるケースが多々あるのです。したがって本書では、臓器転移がある癌を「転移がん」と呼ぶことにします。
(引用:『がん放置療法のすすめ』/近藤誠 著 p14)

このように、日本で最も権威のある、国立がんセンターと近藤誠医師の主張は根本的な違いはないようです。

用語の説明があるので、近藤誠医師の著書から、少し長めに引用しましたが、「転移がん」は、抗がん剤では治らない、と考えて良いのではないでしょうか?

患者さんに医師から、どのような説明を受けたのか?と聞いてみると、

“一緒に頑張りましょうと言われた”、
“抗がん剤はがんに効果がある、という説明を受けた”
“副作用がこれだけ辛いわけだから、これを乗り越えれば自分は治ると信じている”

などの答えが返ってきます。

要は、医師も”治る”とは言えないために、説明よりも、本質に触れない励ましのような形で返答するのですが、患者さんも”治るのか?”という本質的な事は聞かないようです。

当院でも、”抗がん剤で治る”と思い込んでいる患者さんに、”抗がん剤治療の前提に誤解があると思うから、国立がんセンターのWEBサイトを見るように”と何人かの患者さんに勧めていますが、自分で調べた患者さんは現在のところ一人もいません。

また、抗がん剤の延命効果については、国立がんセンターと、近藤誠医師では見解が違っています。国立がんセンターは、延命効果があると判断に、近藤誠医師は延命効果はなし(筆者注:抗がん剤治療で、延命する人も居れば、死期が早まる人もいる)、と判断しているようです。

この点は、部位によってもデータが違うので、患者さんご本人が調べて判断して頂くのが、一番良いのではないかと思います。
参考:国立がんセンター がん統計

=②本当にがん検診で発見されたがんの中に”がんもどき”が含まれているのか?=

近藤誠医師は、治ったとされるがんは、最初から放置していも問題ない”がんもどき”である、という主張をしています。

放置しても問題ない、”がんもどき”というのは、存在するのでしょうか?

=症例1 60代女性 浸透性乳管がん=

検査
2/5  細胞診検査    右乳がんの疑い
2/5  リンパ節穿刺検査 陽性、推定病変1、殆ど壊死性無核状ゴースト
2/5  病理組織検査   浸透性乳管がん(確定
2/17 骨シンチ検査   骨転移の疑い認めず
2/17 CT検査      右乳腺内乳頭直下に10×20㎜大の造影効果を有する小さな腫瘤性病変を認める。

*医師の説明
全的手術がお勧め。ホルモン療法不可。リンパ節隔せい。(リンパ節転移、2㎜)
放置だけは絶対さけるべき。出血、悪臭、痛みで苦しむ結果を招く。

*自分の意志
抗がん剤、手術を望まない。自然治癒力を高めたり、ライフスタイルを改善し、体を痛めつけない形で生きたい。

初回 3/11 右胸、全身 計30分

3月、週3回ペースで施術(計11回)

4月、週2~3回ペースで施術(計10回)

4月23日
検査結果
CEA 4.8(正常 5.0)
CA 15-3 11.0(正常値 25)

5月、週2~3回ペースで施術(計10回)

6月、週2回ペースで施術(計9回)

7月25日 電話あり、クリニックで検査の結果、進行がなかった。
他の臓器も正常。少し休みたい。

上記の例は、気功療法が効いているように見えるかもしれませんが、3月~6月まで、頻繁に施術をした時期と、7月に施術をしなかった時期の結果が変わらないため、恐らく”がんもどき”ではないか?と推測しています。

“がんもどき”と思われるものは、施術をしても小さくなりません。また、放置をしても大きくもなりません。

このような症例は多くあり、2010年以前は、私自身の勉強不足により、患者さんの病院での診断結果を疑う事がなかったため、気功療法の効果で、がんの進行が止まったと思い込んでいました。

近藤誠医師の著書で勉強してからは”がんもどき”と思われる症例は、取り下げていますが、西洋医学、東洋医学、その他の代替医療、すべての治療において、”がんもどき”が,”がんの効果を止める効果があった”症例として掲載されている可能性があります。

この”がんもどき”が論争になっている事を知らない医療従事者、代替医療従事者も多いため、かつての私がそうだったように、悪気なく”自分の治療・施術で、がんの進行が止まった!”と思い込んでいる例も多いと思います。

患者さんには、是非、”がんもどき”を症例に含めると、どのような治療でも、症例ができてしまうという事を知っておいて頂きたいと考えています。

また、ご自身の治療法をお探しの時は、”転移がんの完治例”があるかどうか?を聞いてみる事をお勧めします。

=③代替医療で転移がんは治るのか?=

次に、代替医療で、がんは治るのか?という点を検証してみたいと思います。ここで扱う例は”転移がん”です。

以下、私が様々な講習会や腕が良いと言われる先生方を訪ねて聞いた結果です。全ての治療法、施術法を調べられるわけではないので、最終的な結論ではありません。

代替医療にも様々ありますが、主に”患者の自然治癒力を高めて、がんを治す”という前提で行っている施術や、食事療法などの養生法全般を対象にします。

結論から書きますと、

・腕の良い施術家なら、症状の改善、がんの収縮、延命は可能

・腕の良い施術家でも、転移がんを完治させる事は、極めて難しい

という事になります。

腕が良いというのは、患者さんが多いという意味ではなく、同業者の中でトップレベルだと評価されている施術家と考えてください。

まず、症状の改善という点から見ていきたいと思います。他院の症例を使用する事はできないので、当院の比較的わかりやすい症例で説明していきたいと思います。

=症例2= 肺、食道がん(58歳男性)

・ 症状
食道がん
2004年12月 肝細胞がん手術。2005年 7月 肺転移。現在ステージ4。かゆみ、静脈瘤、耳の異常、咳、吐血。現在は玄米食と人参ジュース。一時期数値は下がったが、その後調子が悪くなる。

7/11 右肺 気功 計30分
7/12 同上 計30分

昨日、多少せきは楽になった。今朝、8時頃血を吐いた(10時からの予約を19時からに変更)。11時頃にはおさまった。右の肺が楽になった。咳が減った。

7/13、15、16 計30分

補足
この段階で、がんが縮小しているとは考え辛く、がん細胞によって破壊された正常細胞が部分的に回復した状態に見えます。当時、私自身も、気功でがんが治ると思っていたので、施術の継続を勧めましたが、この患者さんは”もう大丈夫”と言って、施術を終了しました。

がん患者が”自分の状態を非常に軽く考える”という特徴を知らなかったので、当時は、不思議に思っていました。もちろん、患者さんが他の理由で気功療法を中断したいと考えているのに、私に気を使ったという解釈もできますが、そのような感じではなかった事と、その後、幾度となく同様の体験をしたことから、がん患者の性格的特徴と判断しています。

次に、進行の遅いがんの例を見ていきたいと思います。
=症例3 乳がん手術後、肺がん、(副腎腫瘍、良性)、脊髄腫瘍=

この症例は、約10年気功療法を続けた患者さんの例です。この患者さんは、来院3年前甲状腺がんを発症し、その時は病院の治療(手術)を行っています。当院に来院した当初(2003年)は、乳がんの治療として、抗がん剤治療をやっている時に、副作用の軽減と、(がんとは別の)肩の施術を目的として来院されました。

抗がん剤が終わり、体力が回復するまで週2回、その後は週1回で施術を続け、2年半程経過は順調でした。ところが、気功の施術を2週間に1回に減らしてから3ヶ月後に、肺に悪性の腫瘍が見つかります。(右肺1.9㎝、1.7㎝)
肺の悪性腫瘍も、抗がん剤治療と、気功療法の併用で寛解し、その後、予防のために気功療法を週1回のペースで継続します。

その後、7年間、副腎に良性腫瘍が見つかったのみで悪性腫瘍の発症はなかったのですが、2012年に、体力、気力的に通うのが大変になったということで、2週間に1回のペースに減らします。

その3か月後に、脊髄に腫瘍が見つかります(その時点では、良性か悪性かはわからない、とのこと)。その後、転倒なども重なり来院できなくなってしまったので、予後がどうなったのかはわかりませんが、

・甲状腺、乳がん、肺がん、脊髄に腫瘍、と発症しているので、恐らく転移がんである。
・予防のための気功の施術を月2回ペースにした途端に、二度がんを発症している。

という経過から、”気功療法でがんを縮小した、長期に渡って予防した、し治ってはいない。”と推測しています。

この患者さんは、転移がんという判断があっていれば、私が経験したがんの患者さんの中でも、かなり進行の遅い部類に入ります。また、この患者さんは、通常のがんの患者さんには見られない、”感情が出やすい”という特徴があった事も付記しておきます。

・症状
平成 11年 5月 右肩がブラブラになる。首の痛みがでる。H12年 7月 甲状腺腫瘍。H15年 1月 乳癌(1・31日手術)。2月26日から抗がん剤。その他の症状、ゲップが止まらない、眠れない、足に力が入らない、肩、首の痛み。

H15年
3/5、6,8,11,14,17 気功 計30分

2月26日の抗がん剤の影響で、3月15日頃から髪が抜けてきた。肩は随分よい。首は施術をした後は楽になる。ゲップが少なくなった。
3/19 病院にて抗がん剤治療
3/22、25、28、4/1,4、7 気功 計30分
右肩の状態はほぼ問題なし。睡眠薬を減らしても眠れる日が何日かでてきた。食事がおいしく食べれる。首の痛み(手術の跡から)は施術後はよいが、戻ってしまう。

4/9 病院にて抗がん剤治療
4/14、18,22,25,28 気功 計30分
4/23日の病院での
検査結果
腫瘍マーカー
CEA・・・0.8(正常値5以内)
CAI5-3・・・8(正常値30以内)

補足
その後は週一回、気功、週一回矯正のみの施術。

5月

足に力が入らない症状は数回で改善。髪の毛も生えてくる。
6月
睡眠薬はまったく飲んでいない。趣味のソーシャルダンスを再開。免疫、腫瘍マーカーの検査結果も良好。手術をした、脇から首にかけて痛みはあるが以前よりは5割方改善。首の痛み以外は問題なし。

6/7 病院での検査結果・・・どこも異常なし。健康です。と、言われた。

補足
その後、再発予防のために、週一回ご来院。
腫瘍マーカー
CEA・・・1.5(正常値5以内)
CAI・・・7.8(正常値30以内)

H17年7月より2週間に1回。

10月 CT検査で肺に影があるかもしれないとのこと。10月17日の検査結果で、右の肺に1.9cm、1.7cmの腫瘍が見つかる。

週に2回の抗がん剤治療と気功を併用

10/22 気功 計30分
17日の検査で右肺に1.9cm、1.7cmの腫瘍が見つかった。
10/24 気功 計30分
10/31 気功 計30分

以後、週2回ペース

H18年


補足
2月17日 腫瘍は4mmまで小さくなった。

検査結果
5/2 腫瘍マーカー
CEA 1.4(正常値5.0以下)
CAI 9(正常値30以下)


5/29 腫瘍マーカー
CEA 0.7(正常値5.0以下)
CAI 4(正常値30以下)

補足
6/6日、副腎皮質に2ヶ所腫瘍が見つかる(後に良性と判明)。医師に抗がん剤治療をやるか聞かれ、患者さん本人が頼む。量が微量で、副作用も少ないとのこと。

検査結果
8/1 CT検査 肺の腫瘍はほとんど消滅。副腎は変わらず2cmくらい、良性の可能性が高い。
以後、週2回ぺースで抗がん剤治療が終わるまで来院。H19年11月に抗がん剤治療が終了。H20年、7月現在再発なし

補足
副腎皮質の腫瘍が消えなかったために、長期に渡って抗がん剤治療を受けていましたが、肺の悪性腫瘍のほうはH18年の2月には4mmまで縮小したので、約半年で完全に消えたのではないかと推測されます。
肺がんの抗がん剤治療の場合は、抗がん剤でより悪化してしまう確率が7割、癌が縮小する確率は3割、完全に消える事はほとんどない(主治医談)という事でした。
医師は、気功の事を知らないので、そのまま抗がん剤治療を続けたようですが、副腎皮質の良性の腫瘍に関しても、他に治療のやりようがないので、抗がん剤治療を続ける”というニュアンスで、積極的な治療ではないという感じが受け取れました。
良性の腫瘍は気功でも消えにくいので(悪いものではないので体が消す必要がないと判断するのかもしれません)、患者さんも判断が難しかったようです。

その後、週1回ペースに戻し、平成24年まで、約7年、再発、転移なし。

H24年、4月より、疲れたので2週間に1回にしたいとの申し出がある。
再発リスクが高まる旨を説明し、承諾。

9月、ふらつき、まっすぐ歩けないなどの症状。検査の結果、脊髄に腫瘍が見つかる。
(良性か悪性か、その時点では不明)

その後、転倒で入院し、予後不明。

次に、末期がんの症例を見てみたいと思います。
=症例4 末期がん(60代女性)=

・症状

H24年6月 初回時

背骨及び全身の痛み。家族が見ていられない程の痛み。
背骨が既に変形してきており、かなりの猫背になっている。

息切れが酷い。
食欲が出ない。

補足:
脇周辺や、股関節、頭皮部分、背中などに外から触っても確認できる腫瘍あり。

経過

H20年 11月
乳がん かなり進んでいた。

H21年
手術、左乳房切除、抗がん剤投与

H21年 転移なし
H22年 転移なし

H24年 1月、骨髄転移、内臓までは転移していない。

3月、痛み出す

5月11日の検査数値

腫瘍マーカー
CEA 85.0(正常値 5.0 主に大腸がんで使う腫瘍マーカー)

CA15-3 4022(正常値 25 主に乳がんで使う腫瘍マーカー)

ALP 1125(正常値 115~359 GOT、GPTが正常値でALPが高値のときは、骨疾患が疑い)

補足:
腫瘍マーカーについて、後日医師に見解を聞いてもらったところ、“数値が振り切っている。”との答えが返ってきたとのこと。

生活状況:
静岡市から車で2時間程の場所で飲食店を経営しており、体調が悪化する前は、お店で寝泊まりし、休日に静岡に帰ってきていた。日常生活も困難な状況ながら、本人は度々お店に出ていた。

6/5 気功、背中中心 計30分
6/9 気功 全身   計60分

夜中のトイレがとまった。

6/10 気功 全身   計60分
今朝は調子がよく洗濯ができた。お昼もたくさん食べたが、吐いてしまった。

検査結果
CA15-3 4300台

6/13 計60分、6/14 計45分
6/15 計45分

背中の痛みはかなり良い。

6/20 計45分、6/21 計45分
6/22 計60分

息切れは良くなってきた。あとは、右の股関節が痛みが残っている。

補足:
来院当初から足を引きずって歩いている状態。

6/24 計60分、6/26 計60分、
6/29 計60分

股関節の状態も良くなってきた。

6/30 計60分 7/1 計60分
7/4 計60分

背中の曲がりが酷くなる。

7/5 計60分

検査結果



CA15-3 5046
CEA   201.4
ALP   1491

7/8、11、12、13、15、17、19、計60分
7/20 計60分

股関節の痛みが更に軽減。

7/22、24、26、27 計60分
7/29 計60分

食欲が出てきた。つかまらなくても歩ける。
7/31 計60分

8/2 計60分
お店に出てから調子が悪い。ガンが大きくなっている。

8/3 計60分

検査結果
CA15-3 6320

CEA   229.3
ALP   1610

8/5 計60分

補足:
体調はかなり良くなってきており、痛みも軽減して動けるようになってきているが、腫瘍マーカーが上がってしまったので話し合い。

体調が良くなると、無理をしてお店に出て悪化する、という事を繰り返している。

“痛みを緩和したい”、“元気になりたい”ではなく、“治す”という前提で日常生活を含め、全ての事に取り組まないと改善は難しい段階である事を伝える。

8/7 計60分
先日の話の後、頭がすっきりした。普通に歩けるようになった。

補足:
施術室に入ってきた時に、スタスタと歩いていたので、こちらが驚きました。がんに心因が大きく関係することは知っていましたが、改めて思い知らされたような変化がありました。

その後の経過を見ると、恐らくここから改善が始まったものと思われます。

8/3日以前の症状の軽減が主体の改善と違い、正常な感覚で辛さも自覚するようになったので、文面だけ見ると良くなっているのか悪くなっているのかわからないのが特徴です。

8/9 計60分
8/10 計60分

左太ももに腫瘍らしきものができている。

8/12 計60分
8/14 計60分

前回施術後、お腹に大きなしこりができたと大騒ぎしたが、便秘だった。息切れや腹部膨満感がある。先週から食欲が出てきて、フライドチキンを食べてしまう。

8/16 計60分
便秘がつらい。最近、症状やホルモン剤の副作用、気功療法中の反応が出るようになってきている。

また、外側のみしかわからないが、あちらこちらに、がんが出るという事が減っている。

8/17 計60分
少し便が出て楽になる。貧血なのか息切れがする。

8/19、21、22 計60分
お腹の張り、息切れがある。フライドチキンが食べたくなる。

8/24 計60分
痛みがなくなってきたので麻薬をやめてみる。

8/26 計60分
便秘が辛いから麻薬をやめる。足のむくみが出てきた。

8/28 計60分
足のむくみが酷くなる。息切れ、お腹の張り。気功療法中に響くようになり、苦しくなる。

補足:
腹水を疑う。

8/29 キャンセル。
むくみが酷くて行けない。

8/31 息子さんより電話。
病院で腹水を抜こうとしたが処置できず。マーカーもかなり悪化しているようなので、抗がん剤は断れず。

補足:
数日後に検査結果の具体的な数値を聞きましたが、腫瘍マーカーは悪化していなかったようです。

一週間くらいの間に急にむくみが酷くなり、お腹も足もパンパンに張った状態になりました。後から考えれば、好転反応だったのですが、私自身もこのような形での好転反応は初めての経験だったので、説明がつかない状態でした。

9/2 計60分
今日来れないと終わりだと思い、命がけで来た。ホルモン剤を中止。今後、軽い抗がん剤に切り替わる予定。

検査結果
CA15-3 6049(前回 6320)

CEA   268.9(前回 229.3)
ALP   1185 (前回 1610)

その後、むくみで日常生活が困難になったために入院。以降、出張療法。

9/16 出張療法 計60分
腫瘍マーカー5000台。

9/17 出張療法 計60分
9/22 出張療法 計60分

更にむくみ悪化。病院での処置がないが、
なぜかわからない。

補足:
後からわかった事ですが、腎臓から膀胱にかけての尿管が腫瘍によって締め付けられており、管を挿入することができず処置ができなかったようです。

排尿ができず、約20㎏近くも体重が増えてしまいましたが、それ以外の面での体調は改善していました。

9/25 出張療法 計60分
9/30 出張療法 計60分

少量だが、1日に5~6回尿が出るようになった。先週のように1日1㎏増えることはない。

10/2 出張療法 計60分
上半身のむくみが改善。寝返りはまだうてない。

10/7 出張療法 計60分
さらにむくみ改善。

10/9 出張療法 計60分
日に3回便が出た。腹部、足以外のむくみはかなり引いた。医師が毎日抗がん剤の増量を勧めるが断っている。

10/14 出張療法 計60分
10日の検査で腫瘍マーカー(CA15-3)が1500台
まで下がった。

10/16 出張療法 計60分
昨日から熱。37度4分。

10/21 出張療法 計60分
熱なし。足のむくみが引かない。

10/23 出張療法 計60分
天井の四角い窓が三重に見える。

10/28 出張療法 計60分
足のむくみが急に引く。子宮あたりから右わき腹にかけて腹痛がある。むくみが引いてわかる。泌尿器科での診察の結果、食欲、排尿、排便が良好なので臓器に異常がない可能性が高いと言われる。

10/30 出張療法 計60分
腹部が柔らかくなてきている。
調子が良くなってきたので週に1回にしたい。

11/4、11、18 出張療法 計60分
トイレにも一人で行けるようになり、痛みなく食欲もあり、お通じも良好。

11/25 出張療法 計60分
12月1日に退院することになった。足のむくみがある程度残っている以外、良好。一時期はむくみで70㎏近くまで増えた体重50㎏近くまで戻った。

12/2 出張療法 計60分
昨日退院。
検査の結果、内臓機能は異常なし。
施設に移る。(治療ではなく、食事や家事の介助)

12/9 出張療法 計60分
12/16 出張療法 計60分

お店を継ぎたいという人との話のため、出かける。駅の階段の昇り降りもできた。

12/25 計60分
車の運転ができるようになったので直接来院。歩行、食事、痛み、通じ、問題なし。

H25年
1/4 計60分

股の内側(左)に少し腫瘍がある。

検査結果
CA15-3 541

CEA   489.2
ALP   1036

1/10 計60分
1/20 計60分

18日検査結果。
CE15-3 541

CEA  540
ALD  951

お店の引継ぎのため、あちらこちら動いていたので今回は数字が良くないと思っていた。

補足:
まだ正常値の20倍の数値があるので、事情はわかるが、なるべく疲労を避け、身体の事を一番に考えるようにアドバイス。

1/24 計60分
息切れ、腹部の張りが出てきた。子宮の上の腫瘍が大きくなっている気がする。元気がない。

1/29 計60分
腹部の腫瘍が少し大きくなった感じがする。30日に施設を出て自宅に戻る。

2/10 計60分
家に居れずに出歩いている。むくみ悪化。お店の手伝いで疲れが溜まっている。

3/13 計60分

2月半ばの検査結果。


CA15-3 594
CEA  593.2
ALP  599

約1か月間が空いてしまった。
8日、9日、10日の3日間、気晴らしに外出し、急に体調が悪くなってしまった。

3/14 計60分
3/17 計60分

検査結果
CA15-3 1736

CEA   474.8
ALP   547

5/4 出張療法 計60分
3月20日~5月3日まで入院。当初、肺の水を抜き、新しい抗がん剤治療を開始したが、新しい抗がん剤はやめて、もとの抗がん剤に戻した。
もとの抗がん剤は自分で飲むふりをして捨てていた。また、むくみが酷くなり68㎏まで増える。

5/9 出張療法 計60分
5/12 出張療法 計60分

むくみ増す。

5/19 出張療法 計60分
16日に腹水が溜まり入院。腹水を抜く。抗がん剤を開始することになる。

5/26 出張療法 計60分
24日より抗がん剤。むくみが引いている。ぐったりしている。

6/2 出張療法 計60分
むくみは引いてきているが、だるさが強い。

6/9 出張療法 計60分
だるさが強い。

6/16 出張療法 計60分
6/23 出張療法 計60分

6月19日に、本人より電話。
医師が来てマーカーの数値が良いと言った。

6/28日 息子さんより電話。
今日になり、突然呼吸ができなくなった。肺に水が溜まっている。がんの影響で、胸膜に異常が出てきている。医師の話だと、明朝までは持たない。

7/3日 息子さんより電話。
6月29日に亡くなりました。
ありがとうございました。

補足:
傍から見ていると、あと何日も余命がないのではないか?という状況から奇跡的に、がんが10分の1まで縮小しました。

9月からは微量の抗がん剤も服用していましたが、

・6月の段階で治療は難しいという事で、病院でも緩和ケアになっていた。

・本人が治す事に前向きになった8月から急速に好転しはじめた。

・抗がん剤をはじめる数日前の検査から腫瘍マーカーが下がりはじめた。

・副作用も出ない範囲での、軽い抗がん剤の使用で、末期がんが10分の1に減るという事は考えにくい。

・患者さんの意思に反していたために、そもそも真面目に服用していなかった。

という理由から、ご本人の治癒力で改善したものと考えています。

推測になってしまいますが、他の患者さんのケースでも治療をしていないと入院ができない事もあったので、病院のほうでも何かしらの事情があった可能性もあります。

その後も週1回の施術で維持できていましたが、患者さんご本人の生き甲斐であったお店を手放してからは、“前向きにがんを治す”という事が難しくなってしまったようです。

特に、H25年の2月~3月にかけて1か月空いてしまったのが致命的でした。

5月24日からは抗がん剤を再開し、6月に腫瘍マーカーが下がったものの、その数日後に亡くなりました。

6月に腫瘍マーカーが下がったのは、気功療法では、この段階で週1回の施術では追いつかないので、抗がん剤の効果ではないか?と考えています。

また、抗がん剤の特徴でもありますが、副作用が非常に強く、正常細胞も攻撃してしまうため、がんが縮小しても、抵抗力もそれ以上に落ちるため、全体的には悪化してしまう事があります。

本例は、“治る”という理想的な結果にはなりませんでしたが、

・人間が本来持っている治癒力の強さ

・心理的な側面の重要性


・がんが縮小するが、正常細胞も攻撃してしまう抗がん剤の現状

という重要な側面が含まれているので、ご参考頂ければと思います。

以上の症例を踏まえて言える事は、

・気功療法(その他代替医療のレベルの高い施術者も含む)で症状の緩和、がんの縮小は可能だが、完治させる事は難しい。

という事です。

これまで様々な講習会で、講師の先生や、腕に自信のある先生、同業者の中でも評価が高い先生に、”転移がんは治せるか?”と聞きましたが、”治る場合もある”、”治った患者もいる”という答えはあったものの、明確に”治る”と言った治療者、施術者は一人しかいませんでした。

“治った患者もいる”、”治る場合もある”というのは、(恐らく)数パーセントの患者さんで、治療効果に関係なく、がんの進行が止まったり、がんが消滅したりする自然退縮という現象が起こるからであろうと思われます。

当院に施術を受けに来る、転移がんのがん患者の中には、一度、他の代替医療で寛解してしばらくしてから再発した方が何名かいらっしゃいました。裏を返せば、全国を飛び回って、代替医療で転移がんを寛解させても、完治はちていないという事でしょう。

また、”治る”と断言した施術者は、びわ葉療法の先生で、実際にがんが消えてから数年後の患者さんとのメールのやり取りや、治った患者さん数名との食事会の写真などを見せてくれました。

この先生は、少々変わった先生で、自分が面白いと思った患者さんしか施術をしません。午前中は寝ているから電話に出ない、患者さんの経過に関わらず、自分がつまらなくなったら患者さんの予約の電話にも出ない、自分がやりたいと思ったら、空いている部屋を貸し、費用が足りない分は無料にして徹底的に施術をするというやり方をしています。(そのため、治った方は若い方が多い)

後述する、がんの患者さんが好むタイプとは真逆の生き方をしてる先生になります。

そのため、私自身は、びわ葉療法で治っているのではなく、自然退縮しやすい条件が整っている患者さんが集まりやすいか、何かしら、生き方を変えてしまう影響力を持っているか、という要素が関係しているのではないか?と推測しています。

=どうしたら、がんは治るのか?=

*幹細胞のがん化

幹細胞は、分裂して自分と同じ細胞を作る(Self-renewal)能力(自己複製能)と、別の種類の細胞に分化する能力を持ち、際限なく増殖できる細胞と定義されている。(引用:Wikipedia)

私は、代替医療従事者なので、本来は、がんの病理学的な説明をする立場にはないのですが、(本来は医師の仕事)自分の施術が、がんに対してどのように働くか?を説明する責任もあるので、個人的な見解を書いておきたいと思います。

幹細胞というのは、日本では山中伸弥教授がノーベル賞を授与された事で有名になりました。わかりやすいように簡略化して説明すると、細胞分裂の親玉のようなものだと考えてください。

“自然治癒力”という曖昧な用語の根本になっている、免疫システムは、がん化している幹細胞を攻撃する事はないようです。なぜなら、正常な幹細胞であろうが、がん化した幹細胞であろうが、幹細胞を免疫システムが殺してしまうと、細胞分裂そのものが行われなくなってしまい、生存自体が難しくなってしまいます。

逆に、幹細胞から生まれた娘細胞は、NK細胞に代表される免疫細胞が攻撃する事が明らかになっています。

また、抗がん剤治療でも、幹細胞は攻撃されません。同様の理由で、生存そのものができなくなってしまいます。そのため、がん細胞自体ではなく、がん細胞が増幅する様々な”経路”を攻撃する抗がん剤が、”夢の新薬”として登場しました。しかし、がんのほうが何枚も上手なようで、ことごとく、あっさりと別経路をつくりだし、あっという間に再発してしまいます。

がんを雑草に例えると、伸びてきた雑草を刈り続けるようなもので、根絶やしはできないという事になります。そのため、施術を継続しないと、転移がんは再発してくると考えています。

“自然治癒力”を柱とした、代替医療で、転移がんの寛解はあり得ると考えていますが、完治は難しいという根本的なメカニズムをご理解頂けたでしょうか?

このように、がんのメカニズムを調べていくと、どうにもならないような気がしてきますが、転移がんの治癒は不可能という事なのでしょうか?

*自然退縮者の”心の変化”に注目

このように、絶望的に見える転移がんでも、自然退縮といって、突然がんが縮小したり、消えてしまう患者さんが、恐らく、数パーセントの割合でいます。”恐らく”というのは、がんの自然退縮者は、病院や代替医療の施術院に来ないので、正確な数の把握ができません。

そして、私が信頼している心理療法家の笠原敏雄先生がまとめたところによると、がんの患者さんには、以下のような共通した性格傾向があり、この傾向から外れた患者さんは、予後が良い事を観察しているようです。

、不撓不屈で、猪突猛進的傾向が強く、自己憐憫的傾向が極めて弱いこと。一般には、「癌にもかかわらず、明るく積極的に生きている」とか、「癌にもかかわらず、壮絶な生き方をしている」などと言われることが多いが、実際には、いずれも「がん患者だからこそ」と言い換えるべきであろう。(中略)

、自分の病気(つまり、癌)の状態を過少に評価する傾向が強いため、癌という診断を聞いても動揺することが少なく、軽く考えようとする傾向が強いこと。(中略)

逆に、がんという診断を聞いて、正常の範囲で心理的に動揺する患者の場合には、一般に言われているのとは逆に、私のこれまでの観察では予後がよいように思われる。(以下略)

、対人関係における心理的距離が歪んでいること。(以下略、筆者まとめ:心理的距離が遠いため、身内に対する不満が表出しない)

、どちらかと言えば頑ななほど、常識の枠内で考え行動する場合が多いこと。(中略)医師や看護師の指示をよく守り、他の患者とも問題なく接するという”模範的患者”が極めて多い。(中略)

逆に、入院当日から他の病室に入り込み、他の患者と口論を始めたり、医師や看護婦の指示に従いたがらなかったりする、不満の多い、心理的に不安定な患者の場合には、予測されているよりも、予後がよいようである。(以下略)
(筆者注:権威に弱いという側面があり、自分が納得していない治療でも、医師に勧められると断れない)

、いわゆる面倒見がきわめてよいこと。(中略)
他人のためには相当の努力を重ね、強い主張をして譲らないことも多いが、逆の方向から見れば、自分のためになる行動や主張を極端に回避しているということなのである。(中略)

以上の特徴が比較的少ない患者では、一般に予後が良いように思われる。現代医学以外のいわゆる代替療法を探し求めたり、心理療法を受けたりするなど、自分から治療に積極的に取り組む患者の場合には、その治療の効果を云々する以前に、最初から予後のよい条件がある程度整っていたと考えるべきかもしれない。(引用:『隠された心の力』p205~208 /笠原敏雄著)

また、『がん性格』の著者で心理学者のリディア・ティモショック氏は、メラノーマ(悪性黒色腫)患者の性格的特徴として、

1、怒りを表出しない。過去においても現在においても、怒りの感情に気づかないことが多い。

2、ほかのネガティブな感情、すなわち不安、恐れ、悲しみも経験したり表出しない。

3、仕事や人づきあい、家族関係において、忍耐強く、控えめで、協力的で譲歩を厭わない。権威に対して従順である。

4、他人の要求を満たそうと気をつかいすぎ、自分の要求は十分に満たそうとしない。
極端に自己犠牲的になることが多い。

という特徴を挙げています。

これらは、私の経験とも一致しています。

・表面的な症状が軽減すると、”大丈夫です”と施術を中断してしまう。

・抗がん剤治療が効かなくなって、当院に来院し、気功療法でがんが縮小しても、医師に再度抗がん剤治療を勧められると、断れずに開始してしまう。

・遅刻や予約のキャンセルが非常に少ない。

・笠原先生の心理療法を取り入れようと試みたが、極端に嫌がる。

・本当の事を言わない。例えば、”体調はどうですか?”と聞いても、”おかげ様で順調です。”など、無難な事しか答えないため、実際の様子を身内の方に聞かないとわからない。

・改善して少し体調が良くなると、それまで先延ばしにしていた、友人との会食が始まる事が多い。この時期に無理をし、悪化する事が多い。

などの特徴があります。

症例1の(おそらく)がんもどきの患者さん、症例3(再発時に落ち込んで眠れなくなるなど、正常な感情が出やすい)、症例4(医師と口論をする、感情が出やすいなど)の患者さんは、いずれも典型的な転移がんの患者さんよりは、予後が良い条件をいくつか持っていると考えて良いでしょう。

また、症例4の患者さんは、自分のがんの治療を最優先にした時には、がんが大幅に縮小しています。

がんと患者さんの考え方(生き方)に関する書籍は、

『がん性格-タイプC症候群』/ リディア・ティモショック、ヘンリー・ドレア著
『ガンになりやすい性格』/ 中川俊二著
『隠された心の力』/ 笠原敏雄著

などがあります。

いずれも、傾向を分析したもので、因果関係までは突き止めていません。

私自身は、がんの解決というのは、心理的な原因を探る事の先にあると考えています。前述の雑草に例えるなら、根絶やしにすることが不可能であれば、雑草が育たない環境を作ればよい、という事になります。そして、その環境が一時的なものではなく、続くものであれば、実質がんは解決する事になります。

ただ、がんの自然退縮者の証言というのが非常に少なく、また、一時的に寛解した患者さんと見分けがつかない事と、がんが自然退縮した患者さんの心理的な変化が、一様だとは限らないため、容易に分析が進んでいないのが現状です。

しかし、まず現実に目を向けるという事が治療の第一歩になるという事は、確かなような気がします。

著名なジャーナリストの立花隆さんは、自身が膀胱がんになったのをきっかけに、がんについて徹底的に調べ、抗がん剤治療をやらないという選択をしました。

『がん-生と死の謎に挑む』/ 立花隆著

NHKスペシャルで放送され、上記の本にまとめられています。
(単行本にはNHKスペシャルのDVDがついています)
立花氏の膀胱がんが見つかったのが、2007年12月になりますが、2019年現在でもご存命のようです。

私の経験でも、”主体的”に現状を認識し、正常に落ち込む患者さんのほうが予後が良いという傾向があります。

“転移がん”は、西洋医学の三大療法(手術、抗がん剤、放射線治療”)では、完治せず、自然治癒力を高める代替医療でも、腕の良い施術家ならば”寛解”まで可能ですが、(再発しないという意味の)完治はしません。

そうすると、解決を目指すのであれば、”自然退縮”を目指す事になりますが、

・主体性を持って現実を直視し、実感を伴って”がん”を理解をする事
(現実を知る事が自分の意思に反していたり、理論のみを頭で理解しても変化はありません)

が、自然退縮への第一歩だと考えます。その後の答えは、患者さんそれぞれによって違うはずです。

もちろん、評判の良い治療者、施術家がいれば、必要に応じて代替医療を利用して頂ければ良いと思いますが、主体は患者さんの”自然治癒力”ではなく、考え方、生き方の変化にあります。

当記事が、転移がんの患者さんの自然退縮への一歩目となる事を願っています。

=追記・がんとマクロビオティックについて=

一、本書(筆者注:『がん-ある「完全治癒」の記録』)をウッカリ読むと、あるいは癌、中でも末期癌でさえも、マクロビオティック的食養生を形式的に「厳格」に守り続けさえすれば、かなり高率に軽快して行くという幻想に捉われる人々が少なからず出てくるかもしれないという事が心配される。

初版本の拙文中でも記したように、私自身観察した経験の範囲内では、末期癌での愁訴軽減効果や延命効果は、かなり高率に期待し得るとしても、癌治癒乃至、「完全寛解」は甚だ困難であろうと、少なくとも私には、考えられることを明確に再指摘しておく。

私の現在迄に確かめ得た範囲内に限って云うならばマクロビティック的食養生のメリットはむしろ、死を免れることではなく、死を少しでも安らかに迎えられることが多いということにあると理解して頂きたいとさえ云いたい。

二、しかし、本書で見られるように、「マクロビオティック」の人々は、「マクロビオティック」により、癌が治ることを真に坦々として、「当り前」のことと見做しているように見られる。

それ程に、狂信的信念を持っていると云えば、それまでであるが、それは、単なる信念のみによるとするよりは、やはり、少なくとも或る程度は癌患者の病状が「マクロビオティック」実行により好転して行くのを見た上での信念である可能性も一応考えるべきではなかろうかと考える。

ともかく驚くべき態度と私には思われる。
(引用:『がん-ある「完全治癒」の記録』/アンソニー・J・サティラロ著 p295~296)

がん治療における民間療法で、マクロビオティック(玄米菜食)を勧めたり、取り入れている治療家や指導者が多いと思いますが、食養法に関しても大きな誤解があります。

上記は『がん-ある「完全治癒」の記録』/アンソニー・J・サティラロ著 (原書・1982年刊行)に、”本書に寄せて”という題名で、松井病院附属食養内科部長の日野 厚医師が寄せた文章の引用です。

大意としては、医師でもある著者が、マクロビオティックを中心にがんを治癒させた、とする本の主張に対し、長年マクロビオティックを研究、実践をしてきた日野医師が、誤解を危惧して”マクロビオティックで治癒はしない”との主張を寄せています。

尚、Wikipediaで調べたところ、著者のアンソニー・J・サティラロ氏は、原書刊行の7年後の1989年に前立腺がんによって50代で亡くなっています。また、日野厚医師も50年間、徹底的に玄米菜食を続けたにも関わらず、腎臓がんを発病し、70歳になる直前に亡くなっているとの事です。

アンソニー・J・サティラロ医師は、少なくとも7年は生きた事になるので、マクロビオティックを全否定するわけではありません。しかし、私自身が気功療法で経験した患者さんも、玄米菜食を積極的に取り入れている方が多いのですが、食事療法の効果を顕著に感じた例はありません。

日野医師は、”狂信的信念”、”驚くべき態度”と書いていますが、私自身も既に40年近く前に、”玄米菜食では、がんは治らない”という結論が出ており、未だに”玄米菜食で治る”という証拠が出ていないのにも関わらず、”玄米菜食”を軸とした食養生法が妄信されている事に、違和感を感じています。

がんに関して言えば、西洋医学、自然治癒力を高めるための代替医療、食養生、いずれを検証しても、本当の情報に行きつくまでに苦労する事になります。治療者、患者共に”妄信”という状態にあり、”権威者や市民権を得ているものを疑わない”という集団的な傾向があります。その裏側を見ていくことが、がんの解決に近づく事になるのでは?と推測しています。
(2019/4/9)


=自然退縮、寛解に向けてどの点が重要か?(2020年6月追記)=

2019年以降にわかった事があるので、追記しておきます。上記の笠原先生が挙げた特徴や、リディア・テモショック氏がまとめた特徴を、便宜上以下のように整理してみます。

A,実感が出ないという問題

1、本当の意味での実感が出ない。無理がある「明るく積極的」な姿勢
(解離性障害や離人症とは別で、心因性疾患の患者はそれで苦しい思いをするのに対し、
がんの患者さんは、自分自身に何の違和感もないため、無理をしている事にすら気がつきません。がん患者のほうが、根が深いとも言えるかもしれません。)

2、精神的な距離が遠い

B,自分より他者からの評価や、嫌われない事をを優先するという問題

3、常識的な範囲で行動し、権威に従属的である。
(自己中心的なタイプでも、権威に従属的な人もいますが、あくまで”自分のため”に権威に従属しているのに対し、がんの患者さんは、”嫌われないため”に権威に従属的という違いがあります。

4、自分が本当に必要としている事(命に関わるような事であっても)よりも、社会的常識や、他人への気遣いを優先する

上記のがんの患者さんの性格的特性で、どの要素が、がんの改善に最も影響を与えるのかを、カルテを見直して調べ直したところ、重要な要素としての共通点が出てきたので、検証してみたいと思います。

1、本当の意味での実感が出ない。無理がある「明るく積極的」な姿勢

この特徴に関しては、がんになって落ち込む、ネガティブな感情が正確に出やすい患者さんほど、進行が遅いという印象があります。
しかし、後述しますが、3の”自分より他人を優先する”という状態になってしまうと、一度縮小していたがんが再び増殖してしまう傾向があります。

2、精神的な距離が遠い

精神的な距離が近い患者さんのほうが、進行が遅い、改善しやすいという側面はありますが、精神的な距離が遠いという特徴がある患者さんでも改善しないわけではありません。

3、常識的な範囲で行動し、権威に従属的である。

この点に関しても、抗がん剤が効かなかった時に医師と言い合いになるような患者さんは、予後が良いと言えます。但し、抗がん剤を断って、代替医療で改善した患者さん(権威に従属的ではない患者さん)でも、周囲への気遣いによる無理な行動がはじまると、途端に悪化するため、”権威に従属的”という特徴よりも、家族、友人、親族への気遣いのほうが、がんの改善、悪化に関して大きな要因になっていると考えています。

4、自分が本当に必要としている事(命に関わるような事であっても)よりも、社会的常識や、他人への気遣いを優先する

この点が、がんを治す上で最も重要だと考えています。

過去、末期がんから大幅にがんの数値が下がり、再度悪化してしまった患者さんのカルテを見直したところ、

・体調が少し良くなってから、体調が悪かった時期に会えなかった友人の方と会いだす

という行動をとっている患者さんが多くいらっしゃいます。

末期がんの患者さんは、ほとんどが抗がん剤投与からはじまり、抗がん剤が効かなくなってから、気功療法に来る方がほとんどです。

そのため、友人の方や、親戚の方などの、”会いたい”という要望を、体調不良から数か月断っているケースが多くあります。

特に、抗がん剤治療中は、髪も抜け、食事もままならない方が多いので、友人や親戚の方に”そのような姿を見せたくない”という気持ちから、

面会を拒否している方が多いのですが、体調が改善すると、友人や親戚の方に連絡を取り、会いに行くことが多くなります。

体調の改善と言っても、”何とか数時間なら外出できる”というレベルで、何の問題もなく人と会える状態までは回復していません。

この状態でも、”相手への気遣い”から、無理をして出かけていってしまうという事になります。

当院では、末期がんの患者さんには、最低週3回の来院をお願いしているのですが、この外出の後に、わずか1日で悪化してい事が確認できるケースが多くあります。(リンパ節転移や乳がんなど、外から触ってわかる腫瘍がある患者さんは、腫瘍が大きくなっています。)

また、患者さんからは”友人と会っている時は大丈夫だったけど、その後、急に疲れが出た。”という話をよく聞きます。

つまり、”相手に心配をかけたくない”、”元気な姿を見せたい”と考えている時間は、身体の異変に対して無自覚になっているという事になります。

私も、以前は”疲れ”だと思っていたので、”無理をしないように”と助言するだけでしたが、細かく検証すると”疲れ”では説明できないと考えるようになりました。以下に根拠を挙げてみます。


・抗がん剤治療と併用しての気功療法中に、親、親族の葬儀が入ったがん患者が2名いたが、気功療法も一週間休み、疲れもあったが、がんは悪化しなかった。

・セカンドオピニオンなど、遠方の病院に行って、疲れて帰ってきた末期がん患者も、がんの悪化はない。

・経営者の方など、どうしても行かなければならない仕事などに出て、同様に疲れても、がんの悪化はない

・”過剰、不必要な気遣い”で、(例えば)友人との会食などに行った場合のみ、翌日悪化している。

以上の経験により、


・自分が本来やるべき事よりも、不必要な気遣いを優先させることが、がんの悪化に繋がるのではないか?

・その場合、(数か月以上その状態が続いたら、ではなく)1日以内にがんが大きくなっているのではないか?

・逆に、他人への不必要な気遣いをやめ、自分に必要な事を優先できるようになれば、がんは増殖しないのではないか?

と、考えるようになりました。

1~3は、がんが増殖しやすい土壌(逆に当てはまらない場合は進行のスピードが遅い)と考える事ができ、4が直接的にがんの増減に関係しているのではないかという仮説を立てています。

この点に関しては、患者さん本人、ご家族か、週に数回施術をしている代替医療従事者しか確認ができないので、なかなか表に出てこない情報だと思いますが、私自身は何度も同様のパターンを経験しており、がん患者さん全般的に同様の現象が起こっている可能性が高いのではないかと考えています。

次に、多少飛躍しますが、上記の点に気が付いた後に来院した、末期がんの患者さんの施術中の経験を書いておきます。

・気功療法の施術中に、(お腹がボコボコ鳴ったり)、内臓の動きが確認できる患者さんが、”主人が、抗がん剤を中止した事を良く思っていない”という話をした瞬間に、内臓の動きが止まってしまった(自然治癒のシステムがストップしてしまった?)例がある。

自分の体調(末期がんの場合は命に関わる事)より、周りへの気遣いを優先させた瞬間(数秒)に、自然治癒のシステムが止まっている可能性がある。

この点に関しては、あくまで一例であるため、がんの患者さん全体に言える事かどうかはわかりません。また、施術中の体内の動きまでは、他の方が追試をするのは難しいと思います。そのため、このような経験をした、という報告という形で留めておきたいと思います。
(2020/6/27)