内気功の副作用(気功偏差)について ②慢性化してしまう重い偏差について

■ 練功をやめても続いてしまう重い気功偏差

・走火入魔(引火が病みつきになる)

「走火とは、強烈な意念、力強い呼吸を用いる事によって生じた陽功の偏差である。陽功がまた軽ければ、胸腹部の膨満疼痛や、気が頭で回旋し、頭が締め付けられたように重くなる。さらに症状が重くなれば、内気は至るところで乱流し、外動が止まらず、ひどければ狂乱状態がみられる。入魔とは、練功中に現実でない幻景を本物と信じる事から起こってしまう偏差である。精神錯乱や狂騒がひきおこされるか、ひどければ精神病患者になってしまう。」(引用:『気功医学』/伊藤鉄民 P203)
実際に相談を受けるのは、精神疾患の症状が続いてしまう重い症状の例です。

上の“走火入魔”という引用文は抽象的ですが、現代の病名に当てはめると、

・うつ病(抑うつ状態が続く、頭が働かない、など)
・神経症
・パニック発作、
・慢性疲労症候群(非常に強い疲労感で日常生活が困難になる)
・解離性障害(現実感が出ない、抑うつ、傍からみると憑依のように見える症状)

注:
解離性障害は昔はヒステリーという病名でした。現在は、多重人格障害が知られるようになってから、人格分裂やリストカット、抑うつ、強迫神経症などの症状が多いですが、昔は、身体の麻痺や、いわゆる“キツネが憑いた”という類の症状が出ていました。気功の鍛錬を始めてから、霊に憑かれる、自発功が始まってしまい身体が勝手に動いてとまらない、などの症状は解離性障害の症状に近いと考えています。

・統合失調症(幻覚、妄想)

などになります。
このような症状の出現、悪化には大きく次のようなケースがあります。

①もともと人格面の問題を含む精神疾患があり悪化したケース

相談が最も多いのがこのケースです。

通常の社会生活や日常生活ができており、一時的(数年に渡るケースも含む)に、うつ病などを発症した方が自分自身で気功をやっても、余程の無理をしない限り、根本的に悪化することはありません。

何度も繰り返すうつ病や、慢性的な神経症、解離性障害、人格障害、統合失調症などの場合は、根に人格面の問題があることが多く、自然治癒力の問題ではない事が多くあります。

例えば、

・自立に対する抵抗が強く、社会に出れない

・距離の近い人間関係が苦手

・現実の世界を生きていない(記憶が無い、妄想など)

などになります。

自分自身で行う内気功の性質上、解離性障害や統合失調症の場合、人格分裂が進んでしまったり、妄想が酷くなることがあるので注意が必要になります。

恐らく、気功が悪いというより、瞑想や呼吸法で治そうという事自体が現実逃避になっている事と、(私の経験上ですが)一歩ずつ改善させるというよりは、飛躍した考え方をする患者さんが多いため、意念(イメージ)を使うものは適さないのではないかと考えています。

そのため、自分自身で行う気功で改善させるのは難しいと言わざるを得ません。

人格面の問題を抱えている場合、当院で行っている外気功の施術でも、症状は軽くなりますが、根本改善は難しくなります。

うつ病で例を挙げると、学生時代から何度もうつの発症を繰り返し仕事に就けないという患者さんと、普通に社会生活を送っていたのに、介護と仕事が重なり、うつ症状が出た、という患者さんでは意味合いが違ってきます。

前者は、人格面や考え方に問題を抱えている事になり、後者は誰でもなる可能性があります。

前者のケースでは、当院の施術で症状が軽くなり、仕事ができそうな状態になってくると、症状をぶり返したり、他の症状が出たりする事がありました。

私が20代の頃は、講習会ばかり行っていたので、同様の問題があるかどうかを様々な分野の先生に聞いてみましたが、同じような経験を持つ治療家が複数いました。

恐らく、治療家が腕を上げれば、また病院での投薬治療が進歩すれば解決するという事ではなく、生き方、考え方の変化が必要な領域があるという事がわかってきました。

そのような経緯で、何か対応する方法はないか探していたところ、2006年に患者さんの自滅的な傾向と、それを緩和する心理療法を専門的に研究している先生がいる事がわかりました。

当院でも、その心理療法を取り入れ、概ね良い結果が出ています。但し、心理療法を併用しても、すぐに解決するわけではなく、数年単位の時間が必要になります。そのため、患者さんにも無理に進めているわけではありませんが、興味のある方はこちらをご覧下さい。

後者に関しては、仕事を変えようか悩んでいた、あるいは、子育て、離婚、介護などが重なった、などの状況で、いわゆる“普通の人”が、うつ病になったケースです。この場合は、“適切に行えば”という条件付きですが、自分自身で行う内気功も良い方向に働くのではないかと思います。

また、当院での外気功での改善例も多くあります。

“人格面での大きな問題を抱えているか?”で大きく違ってきますので、参考にしていただければ幸いです。

②通常の社会生活、日常生活が出来ていたにも関わらず、慢性症状が出たケース

この場合もいくつかのケースが考えられるので、順番に例を挙げていきたいと思います。

A、緊張が残っているケース

無理な練功を続け、首、腰などに異常が出て、それが残ってしまうケースです。頸椎や腰椎などがもともと正常で、気功でズレが生じる事は考えにくいのですが、むち打ちや怪我などで自律神経の症状があり、改善させるために気功を始める方もいると思います。

適切に練功を行っていれば間違いはないのですが、やはり無理な呼吸や過度な集中によって、逆に緊張を高めてしまう場合があり、症状としては自律神経系の不定愁訴が主になります。

この場合は、外気功で速やかに改善する事が多くあります。

その他、鍼やオステオパシーの頭蓋仙骨療法などでも腕の良い先生であれば改善すると思います。

B、過剰な能力開発は行われてしまったケース

この場合は、ある意味では練功の効果があったとも言えるのですが、能力開発を目的とした練功によって、感覚が鋭くなりすぎるケースです。

特に、尾骨周辺や、脳下垂体周辺を活性化しすぎると、感覚が鋭くなりすぎる事があります。

自身の練功だけではなく、波動医療を過剰にやりすぎたり、能力開発系のグッズや、パワーストーンなどを過剰に使いすぎると同様の症状が出る事があります。

感覚が鋭くなることは良い事だと思いますが、情報量が多いと負担も大きくなります。

そのため、

・人混みなどが苦手になる
・電子機器や乗り物などが苦手になる
・リラックスができない(不眠症などに繋がる)
・小さな事でイライラする、慢性的な不安が続く
・自律神経系の不定愁訴
などの症状が出る事になります。

このような症状が続くと、結果として、

・うつ状態
・頭が働かない
・慢性的なだるさ
などの症状が長期に渡って出る場合があります。

私自身の経験としては、気功家になったばかりの頃は、電話が長時間になったり(電磁波)、カーペットの上に長時間座っていると“のぼせ”の症状や、なんとなくイライラしたりという症状が出ました。

また、人混みも“ノイズが多い”という感じがして、あまり行かないようになりました。

このような症状は、パニック発作や不安障害とは別の原因なので、なかなか理解してもらえるものではありません。

幸い、日常生活に支障をきたすレベルではなかったために、二次的な症状までには発展しませんでしたが、一度開発されてしまった感受性をもとに戻すのは、なかなか難しい事なので、困った記憶があります。

施術者としては感性は鋭くしたい、しかし、感性を鋭くすると日常生活の範囲が狭まってしまうというジレンマが数年続きましたが、たまたま別の目的で取り入れた心理療法の“感情の演技”という治療法(カウンセリングではなく、修行的な内容になります。)を、患者さんに使う前に、自分で試してみたところ必要な部分の感性は伸び、気にしなくてよいことは、気にしなくなるという、オンとオフの切り替えができるようになりました。

心理療法の詳しい説明はここでは省きますが、能力を上げるには、自分自身の許容範囲を大きくすることも必要です。“感情の演技”という方法は、許容範囲を大きくすることに役に立ったと考えています。

感性を向上させると、良い事も悪い事も、今まで見えなかったものが見えるようになるので、抱えなければいけない負担も大きくなります。
もともとの許容範囲が大きい天才肌の人は、何をやっても大丈夫でしょうが、普通の人では、急激な感性や能力の向上があると、抱えきれなくなってしまいます。

色々なやり方があると思いますが、気功に限らず、許容範囲を超える能力開発は、様々な問題が起きる事があるので、許容範囲を大きくするという発想が必要になると考えています。